ベクトル解析でナブラ演算子というのがあった。
複素数は二次元の実数平面と対応させることができるので、
ということをやってみます。
複素ナブラの定義
ベクトル解析のナブラに倣って、複素ナブラを形式的に
と定義します。ただしx,yはそれぞれ引数zの実部、虚部を表します。
1,iが実軸虚軸の基底ベクトルであると考えています。
共役ナブラ
複素数の共役と全く同じように、ナブラ演算子に対しても共役を定義してみます。
とします。
複素ナブラの作用
ここでは、複素関数f(z)を、二変数実関数
によって表します。以下、をと表すことにします。また、
と表します。
です。
これについても同様に
とします。
勾配
ナブラをfの左からそのまま作用させることで、勾配を定義できます。
共役ナブラを使うと、共役勾配を定義できます。
発散
ベクトル解析のナブラに倣って、発散を以下のように定義します。
共役発散は以下のように定義できます。
これらは実数になります。
回転
2次元のベクトル解析に倣って、
と定義します。共役回転は
です。これらも実数になります。
ラプラシアン
によってラプラシアンを定義できます。ラプラシアンは「実数」なので、共役を定義する必要がありません(ラプラシアンの共役はラプラシアンと考えても良い)。
複素ナブラの性質
線形性
勾配とラプラシアンには複素線形性がありますが、発散と回転には複素線形性がありません。回転と発散は実数になるので、fをifに置き換えても結果はi倍されないことからすぐにわかります。
積の微分法
が成り立つことはすぐにわかります。これは通常の微分と同じです。ですが回転と発散についてはこれは成り立ちません。これも、g=iなどとおくことで、実数ではなくなることからすぐにわかります。例えば
です。
回転と発散はあまり良い性質を持っていないようです。実数のベクトル解析の概念を無理に導入したせいでしょうか。ですが勾配は良い性質を持っています。
二つのナブラの演算
二回微分は共役を含めなくても3*3で9通り、共役を含めると6*6で36通りも考えられます。それら全てを調べるのは面倒です。そこで二つのナブラの演算について考えてみます。
まず、積について
はラプラシアンです。これ以外にも
が考えられます。
これらの和は
和から出発すると
なので、x、yの偏微分もナブラで表すことができます。を使ってfのx、y成分も表せるので、これらを使って回転や発散も表すことができます。
これらの積は
です。
回転、発散を勾配と共役勾配、fとfの共役で表す
を使って、回転、発散を勾配と共役勾配、fとfの共役で表します。まずは発散から
共役発散は
回転は、
共役回転は
とまあそれなりに意味ありげな感じにはなったのかなと。
ウィルティンガー微分との関係
実はウィルティンガー微分という概念が既にあって、
なのでこれは勾配とほとんど同じ計算なんですね。
なので新しくナブラ演算子を定義する必要があったのかという疑問はあります。
どちらを共役にするかについて逆なのは面白いですね。
ですがナブラ演算子の方が直感的なような気がします。
宇宙人の数学ではナブラ演算子を使っていてもおかしくないと思いますね。
これ以降の記事でもこの記号を活用していきたいと思います。