複素関数の正則性について議論します。
微分可能の定義
が存在することである。
正則関数の定義
複素関数fが正則である条件は、複素数平面(ガウス平面)上全ての点でfが微分可能であることである。
正則関数の条件
複素関数fが正則関数である条件は、
が微分可能であり、であることである。
ただし、引数zを実数x,yで表した時、であるとする。ここで、ナブラは、複素関数に対するナブラ演算子である。
証明
厳密な証明ではなく記憶法的な導出を述べる。関数fが正則関数なら、導関数f'が存在して、zの微小変化dzに対し
と書けるはずである。
この微小変化を実数微小変化dx,dyで
と書くと、
であると同時に
である。この二式は、dx,dyが微小であれば任意の場合に成立する。このため、dx,dyの係数を二式で比較することによって、
...①
...②
ゆえに、
これは
と書ける。
逆に、この方程式を満たして、かつf_x,f_yが微分可能な時、①によって微分係数を計算すれば、それは微分の定義を満たしており、従って正則関数であるということが示せるはずである(それは省略する)。
コーシーリーマンの方程式
実部虚部による表現
を成分で書くと、
左辺の実部虚部が両方ゼロであることから
の二式が得られる。これをコーシーリーマンの方程式という。
ラプラス方程式を満たすこと
コーシーリーマンの方程式はラプラス方程式を満たすことが知られているが、これはナブラ演算子の表現
に共役ナブラを作用させることで、
であるからすぐにわかる。これが複素ナブラ記号の威力である。
と書くと、
の実部と虚部がそれぞれ0であることから、
すなわちfだけでなくfの実部と虚部それぞれがラプラス方程式を満たす。
ウィルティンガー微分によるディーバー方程式
ナブラ記号はウィルティンガー微分によっても表せるから、コーシーリーマンの方程式は
と表せる(ディーバー方程式)。
正則関数の導関数
ナブラ演算子による表現
正則関数の導関数をナブラ記号で表してみます。
①、②
...①
...②
をわざとらしく1/2ずつミックスすると、
...③
となります。またナブラ演算子により簡潔に表すことができました。
ウィルティンガー微分による表現
ウィルティンガー微分で③を表すと
となります。
正則関数が無限回微分可能であることの証明
正則関数は無限回微分可能である。このことを示すには、正則関数の導関数が正則関数であることを示せばよい。
fが正則関数のとき導関数f'は
である。このf'も
だから確かに正則である。このように、ナブラ記号を使うことで重要な性質が一瞬で導ける。
微分可能性について
二つの複素関数f,gがz=z_0において微分可能なら、f+gやfgもこの点において微分可能であり、微分のルールは実関数の場合と同じである。つまり
...④
...⑤
微分可能であることの証明は、コーシーリーマンの方程式
から、④、⑤はすぐにわかる。公式の証明も、微分のナブラ演算子による表現
から簡単に示すことができる。
f,gが正則な場合、合成関数f○gも正則であり
...⑥
である。これも、コーシーリーマンの方程式から、
なので、正則であり、合成関数の微分法は