物理的宇宙

物理学を自分なりに再構成することを目指すブログです

整数冪指数の微分と積分

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整数冪指数の冪乗の微分積分について整理する。

整数nに対して

f(z)=z^n

という関数の微分積分について考える。

微分

実数関数と形式的に同じ

f'(z)=nz^{n-1}(nが正でないならz=0以外において)

であることが期待される。実際、特異点以外ではそうであることを確認する。

nが正であり特異点がない場合

微分可能であることは\nabla f=0であることからわかる。

積の微分法数学的帰納法で示せる。

n=1の場合、明らかにz'=1=1*z^0なので成立。

n=kのとき成立する場合,n=k+1について考えると

(z^{k+1})'=(z^k)'z+z^k=kz^{k-1}*z+z^k=(k+1)z^k

なので、n=k+1でも成立している。

n=0の場合

z^0=1なので微分すると0になることに注意する。z=0では公式が成り立たない。

nが負であり特異点がある場合

原点以外で微分可能であることは\nabla f=0であることからわかる。

z=0では特異点なので微分不可能である。

f'(z)=nz^{n-1}であることを数学的帰納法で示す。

n=-1の場合

(1/z)'=\frac{\partial}{\partial x}\frac{1}{x+iy}=\frac{-1}{(x+iy)^2}=\frac{-1}{z^2}

なので成立する。

n=-kで成り立っている場合、n=-k-1について考えると、

-kz^{-k-1}=(z^{-k})'=(z^{-k-1}z)'=(z^{-k-1})'z+z^{-k-1}

なので、

(z^n)'=(z^{-k-1})'=(-k-1)z^{-k-2}=nz^{n-1}

となり、成立する。

積分

nが非負であり特異点がない場合

正則関数なので、原始関数によって線積分を書くことができる

原始関数は微分の公式から

F(z)=\frac{z^{n+1}}{n+1}

なので

\int_{z_1}^{z_2}z^ndz=\frac{z_2^{n+1}}{n+1}-\frac{z_1^{n+1}}{n+1}

nが負であり特異点がある場合

特異点があるので、正則関数ではない。ゆえに、積分は原始関数で書けるとは限らない。そこで、原点の周りで単位円の軌道に沿って積分してみる。この軌道を

z(\theta)=e^{i\theta},0\leq\theta\ \lt2\pi

で表す。

\frac{dz}{d\theta}=iz

である。

見やすさのために、nを正の整数とし、z^{-n}について考える。定義に従ってパラメータ表示で計算すると、

\int_Cz^{-n}dz=\int_0^{2\pi}e^{-in\theta}izd\theta=i\int_0^{2\pi}e^{-i(n-1)\theta}d\theta

 

よってnが2以上なら

i[\frac{1}{-i(n-1)}e^{-i(n-1)\theta}]_0^{2\pi}=0

である。ゆえに、z=0で正則ではないが、正則関数と同じようにゼロになる。正則ではないのはz=0のみなので、単位円で積分して0ならば、それ以外の閉経路でも積分が0になることはコーシーの積分定理Ⅱの証明と同様にしてわかる。従って、コーシーの積分定理Ⅲと同じ論理で、

F(z)=\frac{z^{-n+1}}{-n+1}

という原始関数Fで

\int_{z_1}^{z_2}z^ndz=\frac{z_2^{-n+1}}{-n+1}-\frac{z_1^{-n+1}}{-n+1}

と表せる。

 

ここまでn=1以外では原始関数の表記が実関数と全く同様の

F(z)=\frac{z^{-n+1}}{-n+1}

で表すことができていた。

そこで、n=-1についても、実数関数の場合と同様に、

F(z)=\ln|z|

という原始関数で積分を 表せるのではないかという仮説を立てることができる。

実際、z=0以外でF'(z)=\frac{1}{z}である。

ところが、n=1の場合、つまり

f(z)=\frac{1}{z}

の場合に限り、

\int_Cz^{-n}dz=i\int_0^{2\pi}e^{-i(n-1)\theta}d\theta=i\int_0^{2\pi}d\theta=2\pi i

なので、積分が0にならない。

従って\int _C\frac{1}{z}=F(Cの終点)-F(Cの始点)

という形で表すことはできない。

1/zの線積分

だが、正則でないのはz=0でのみなので、Cが単位円ではなくても、反時計回りでz=0の周りを一周するならば、

\int_Cz^{-n}dz=2\pi i

となる。このこともコーシーの積分定理と同じような論理で示せる。

単位円軌道Cの一部C'をC''に変更する。C'-C''は原点を囲まない。

上の図のように、単位円軌道Cの一部C'をC''に変更することを考える。新しい軌道をC_newとする。C'-C''は閉軌道となる。これは原点を囲まないとする。すると、C'-C''については内部が正則なので

\int_{C'}\frac{1}{z}dz-\int_{C''}\frac{1}{z}dz=\int_{C'-C''}\frac{1}{z}dz=0

ゆえに

2\pi i=\int_C\frac{1}{z}dz=\int_{C_{new}}\frac{1}{z}dz

である。

原点を反時計回りに一周するような軌道は全てこのような操作を二回行うことで作れるから、そのような軌道の積分は全て2πiである。

当然反時計回りにn回回る軌道は2nπiで、時計回りなら-2nπiである。