永久機関の2種類の定義を説明し、それらが存在しないことを証明します。
第一種永久機関
定義
第一種永久機関とは、系が何らかの変化を経て同じ熱力学的系に戻っていくような過程(サイクル)であって、その周囲の合計エネルギーが増加するような過程をいう。
存在しないことの証明
第一種永久機関が存在すると仮定する。そのような機関と周囲の環境全体を十分大きくとることによって、これらの全体は孤立系とみなすことができる。すると、サイクルを一回経た後に、その孤立系の合計エネルギーが増加していることになる。これは熱力学第一法則に矛盾する。故に第一種永久機関は存在しない。
第二種永久機関
定義
第二種永久機関とは、系がただ一つの熱浴と純粋な熱的接触を行う以外は常に断熱過程のみを経て、同じ熱力学的状態に戻っていく過程(熱機関の過程)のうち、その断熱過程における系がした断熱仕事の合計が正となるもののことである。
このような系が存在するならば、空気など周りの環境を一つの熱浴と考えて、発電することができる。空気などの熱エネルギーを仕事に変えるのは、エネルギーの総量が増えているわけではないから、エネルギー保存則を侵すわけではない。
存在しないことの証明
第二種永久機関が存在すると仮定する。このサイクルは、初期状態をSとして
C:
と表現できる。ただしは断熱過程であり、は同じ温度の熱浴との純粋な熱的接触である。H→A→H→A...というパターンもあるが、初期状態の位置をずらせば同じサイクルをこのパターンと同じ表現にすることができ、一般性を失わない。
まずエネルギー収支を考える。
における外界にした断熱仕事をと書く。第二種永久機関であることの条件は
...①
である。
における熱浴からもらった熱エネルギーをと書く。これが負の場合は、熱浴にエネルギーを渡した場合である。
系は最終的に同じ状態に戻ってくるので、系のエネルギー収支から、
である。これと①から、
...②
である。
次にエントロピー収支を考える。
におけるエントロピー変化を、におけるエントロピー変化をとする。負の値はエントロピー減少を意味する。
...③
である。
...④
である。
系は最終的に同じ状態に戻ってくるので、系のエントロピー収支は
である。これと③、④より
故に
ところがこれは②と矛盾する。
故に仮定は誤りであり、第二種永久機関は存在しない。
クラウジウスの不等式による証明
第二種永久機関のサイクルについて、クラウジウスの不等式を適用すると、
となり分母の温度は共通なので、
である。従ってサイクル一周のエネルギー収支から断熱仕事の合計も負にならなければならず、エントロピー増大則と矛盾する。故に第二種永久機関は存在しない。