物理的宇宙

物理学を自分なりに再構成することを目指すブログです

量子系の測定順序の入れ替えと、測定による系の擾乱

←量子論

量子的な測定というのは、単に「系の情報を得る」だけのことではないということを示す。

 

初期状態|\psi\gtに対して、二つの縮退していない演算子q,pの測定を限りなく同時に行うとし、その時刻におけるq,pの測定を考える。あるいは、q,pは時間に依存しないとしてもよい。ただし、どちらを先に測定したのかについての区別をつけるものとする。

 

古典的な確率的系においても、確率変数同士は一般には独立でないので、先に測定した方の情報をもとに、後に測定する確率分布が(条件付き確率として)変化するということは起こりうる。だが、測定が「系の情報を得る」だけのものであるとするなら、最終的な測定結果の組(q,p)の確率分布P(q,p)は、測定の順序によらず変化しないはずだ。

 

量子系の測定の場合を考える。q→pの順序で測定する場合

P_{q→p}(q,p)=|\lt q|\psi\gt|^2|\lt q|p\gt|^2

p→qの順序で測定する場合

P_{p→q}(q,p)=|\lt p|\psi\gt|^2|\lt p|q\gt|^2

この二つは、p,q,ψを特殊に選ばなければ明らかに異なる。量子系の測定は単に「系の情報を得る」というだけのものではない。量子系の測定は、系の物理的状態を変えてしまう。このことは量子論における測定と(非決定論的な確率過程を含めた)古典論における測定の間の最大の違いである。量子論は単なる確率過程として解釈してはならないのだ。

 

量子論の枠組みにおいては、系の情報を得るだけで他に何の変化もくわえないようにするということは(特別な場合を除き、一般には)不可能なのだ。それがなぜなのかは量子論のミステリーだが、何かこれといった矛盾があるわけではない。